ベンジルブロミド(BnBr)って何?
有機合成をやったことがある人ならベンジルブロミド:Benzyl Bromide(BnBr)は使用したことがある人も多いと思います。略称としてベンブロと言ったりしているかもしれませんね。
和名は臭化ベンジルですね、催涙性があるので、なるべくドラフトの中で取り扱いましょう。なので、あまり頑張って秤で量り取ろうとすると部屋がベンジルブロミドで充満してしまうのですばやくやるか、体積で量りとりましょう。
催涙性といいますが、涙がでたことなかったです。ただ、くしゃみは出ましたね。そのへんのマスクは貫通します。
条件 : アルコール、アミンの保護
ベンジルブロマイドはアルコールやアミンのベンジル化に使います。
臭素は脱離能が高く、ベンジル化に適しています。塩素バージョンのベンジルクロリドも使うことができます。ベンブロのほうが反応性が高いです。
臭素や塩素は脱離基と言ってBr-、Cl-といったマイナスイオンの状態になりやすいために、Br-C, Cl-C結合が切れやすく、そこにアルコールやアミンが代わりに置換するという経路でベンジル化されます。
アルコールの場合よく使われる条件は、NaHという塩基を加えてアルコールのプロトンを奪い、R-ONaというアルコキシドにします。これはもとのアルコールよりも反応性が高いので、ベンジル化がより進行しやすくなります。アミンの場合はNaHほど強い塩基を使わなくても、アミン自体が反応性が高いので置換されます。アミンの場合は弱い塩基である炭酸塩(炭酸カリウムや炭酸ナトリウムなど)で良いと思います。炭酸塩は溶けにくいので、過剰に加えて問題ないです。
触媒量(0.1-0.4eq)のTBAIを添加物として加えるとin situ(試験管内で)でより反応性の高いヨウ化ベンジルが生成し、反応を加速させるものです。反応がうまく進行しない場合は入れてみてください。最初から入れても良いです。また似たものでKIもあります。どちらを使っても良いです。KIのほうが除去は楽かもです。
反応条件
・酸化銀(Ag2O)を使う条件(塩基に弱い基質の場合)
分子内にエステルなどの官能基がある場合、分解する可能性があるので、中性条件で反応させたい。そんな時は酸化銀と臭化ベンジルを使うと良い。銀はハロゲンと反応しやすく、ベンブロは反応性の高い求電子剤ベンジルカチオンを生成する。糖などO-アセチル転位などを起こしたくない場合は、超脱水溶媒を使用し、できれば新品の酸化銀を使用する。(基質に対してBnBr1.1eq, Ag2O 1.5 eq, 溶媒はDMF, DCM, Toluene、DCM/n-Hex 4:1、温度r.t.-60, 時間~48h、遮光、Ar雰囲気下) DMFだと反応が進行しない場合もあるらしい? 後処理はセライトろ過後、分液 or 濃縮。
・トリクロロアセトイミデートを使用する方法
ベンブロではありませんが、酸条件で進行するもう一つの方法があります。ベンジルトリクロロアセトイミデートとトリフルオロメタンスルホン酸を使った方法です。酸条件でマイルドに反応が行えます。
・ニート:neat(溶媒なし)条件
ベンブロは液体です。アルコールが液体のときやベンブロにわずかに溶けそうなら溶媒を加えずにDIEPA(ジイソプロピルエチルアミン)を塩基として、TBAIなどを加えて90℃、撹拌でベンジル化できます。
・LHMDSを塩基として使用
LHMDSは嵩高い塩基でBoc保護したアミドなどがベンジル化してしまう場合に使用すると、嵩高いBoc基の影響でアミドがベンジル化しない。-78℃で加えて徐々に昇温させます。
脱保護
ベンジルの脱保護は還元条件で外せます。適当な量のPd/Cを加えて、水素雰囲気下、アルコール、THF、酢酸エチルなどの溶媒中で激しく撹拌する。外しにくい時は少し温度をかける、Pd(OH)2、PdCl2を使ってみる。塩酸や、ギ酸、酢酸などを加えてみる。
ハロゲンの脱離などが起こる場合は、水素ではなく、ギ酸アンモニウムなどを加えてみる。ギ酸アンモニウムは水素源として利用していて、利点として水素の当量調整が可能なてんで、過還元を抑えられる。
還元条件は多重結合や芳香族ハロゲンなどは還元されるので注意。
クエンチ・精製
ベンジルブロマイドが残ってしまう。
アルコールなどのベンジル化は極性が下がるので、場合によってはベンジルブロマイドを除去するのが大変な場合があります。(通常は極性が低いので、低極性溶媒で流したら最初に出てきます。)反応性が高そうな割にクエンチしても潰れないことも多いかも。
・頑張って飛ばす
化合物が熱に弱くない、沸点が高い、過剰なベンジル化などの心配が無いのなら熱して真空減圧で飛ばしましょう。
・クエンチする
適当な溶媒中でTEAを加えるとトリエチルアミン塩になるということを聞いたことがあります。(やったことない)
同じような方法で酸化銀を使って分解させたあとにろ過するという方法もあります。シリカに酸化銀混ぜて分けるとかいうのもあるそうですが微妙そう。
後は水、塩基で普通にクエンチするという方法もあるでしょう。
ベンジルブロミドの購入
主要な試薬会社での価格を調べてみました。
TCI:25g ¥2,400
https://www.tcichemicals.com/eshop/ja/jp/commodity/B0411/
wako: 25mL, ¥2,800
http://www.siyaku.com/uh/Shs.do?dspCode=W01W0102%2D0135
nacalai: 25g, ¥2,000
https://www.nacalai.co.jp/ss/ec/EC-srchdetl.cfm?Dum=1&syohin=0460242&syubetsu=3
sigma-ald: 25g, ¥2,800
https://www.sigmaaldrich.com/catalog/product/aldrich/b17905?lang=ja®ion=JP
nacalaiは安いですね。トルエンやベンジルアルコールを臭素化して合成することもできますが、この値段なら買ったほうが安くて早くてきれいでしょう。
ベンジルブロミドに関する情報・リンク
↑ベンジルブロミドの合成
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